2006-01-01から1年間の記事一覧

『ダーク・タワー III ―荒地―』スティーヴン・キング【3】

では、「第二章 鍵と薔薇」。 さて、第1部『ガンスリンガー』で、ローランドが見殺しにした少年、ジェイク・チェンバーズが登場します。ジェイクは11歳、教育レベルが高いことで知られる有名校に通っています。しかし、そんなジェイクは自分が狂い始めてる…

『ダーク・タワー III ―荒地―』スティーヴン・キング【2】

では、「第一部 ジェイク」の「第一章 クマと骨」です。 ガンスリンガー一行は、砂浜を抜け森へと入りました。今回は、この森から幕を開けます。前作ではいきなりローランドがロブスターの化け物に襲われましたが、今回はクマが登場。後ろ脚で立つと70フィー…

『ダーク・タワー III ―荒地―』スティーヴン・キング【1】

シリーズ第3部、 『ダーク・タワー III ―荒地―』スティーヴン・キング にいきたいと思います。 今回も上下巻。『運命の三人』より、ぶ厚い2冊になってます。 では、例によって目次から。 第一部 ジェイク――一つかみの骨灰の中の恐怖 第一章 クマと骨 第二…

『ダーク・タワー II ―運命の三人―』スティーヴン・キング【4】

はい、読み終えました。最後のパート「押し屋」はめまぐるしく、息もつかせぬ展開です。とりあえず差し迫った問題は3つ。ローランド自身の病気、隠れているデッタ、3人目の仲間は誰か。さあさあ、タイムリミットが迫る中、これらをローランドがどう解決す…

『ダーク・タワー II ―運命の三人―』スティーヴン・キング【3】

ガンスリンガーは砂浜に立つ扉から、エディを連れ帰ってきました。彼は暗黒の塔への至るために必要な仲間らしい。扉は運命そのものです。予め定められているかのように、未来の仲間のもとへとつながっている。つまりこの巻は、「運命の三人」、旅の仲間を集…

『ダーク・タワー II ―運命の三人―』スティーヴン・キング【2】

ダーク・タワー・シリーズ第2部『運命の三人』、上巻を読み終えちゃいました。ここに収録されているのは「囚われ人」のパートですが、これが読み出したらやめられない。これだけで、独立した作品にしてもいいくらい。 ということで、まずは、前章で突如砂浜…

『ダーク・タワー II ―運命の三人―』スティーヴン・キング【1】

ダーク・タワー・シリーズ第2部。 『ダーク・タワー II ―運命の三人―』スティーヴン・キング です。 今回は、ボリュームが増えて上下巻です。前回同様、まずは目次から紹介します。 プロローグ 船乗り 囚われ人 第一章 ドア 第二章 エディ・ディーン 第三章…

『ダーク・タワー I ―ガンスリンガー―』スティーヴン・キング【4】

残りの2章を読み終えました。「第四章 スロー・ミュータント」「第五章 ガンスリンガーと黒衣の男」。ガンスリンガーの過去や、暗黒の塔が何なのか、この世界の成り立ちなんかが徐々に明らかになっていきます。 まずは、第四章から。 ガンスリンガーとジェ…

『ダーク・タワー I ―ガンスリンガー―』スティーヴン・キング【3】

「ガンスリンガー」ってのは、ガンマンみたいなものだと思われますが、この小説で「ガンスリンガー」と呼ばれている主人公は、本名を「ローランド」というようです。 ということを踏まえて、「第二章 中間駅」〜「第三章 山中の神殿」です。 第二章は、ガン…

『ダーク・タワー I ―ガンスリンガー―』スティーヴン・キング【2】

では、扉に掲げられた、「19」「再開」という謎の言葉と共に、これから長い長いお話が始まります。 って書いた、昨日の続きから。 「第一章 ガンスリンガー」は、この本の2/3を占める長さの章ですが、早速読み終えました。さすがキング、するする読める。 黒…

『ダーク・タワー I ―ガンスリンガー―』スティーヴン・キング【1】

では、今回は、これです。 『ダーク・タワー I ―ガンスリンガー―』スティーヴン・キング です。 世界一有名なホラー作家、スティーヴン・キング。全7作から成る彼のライフワーク、「ダーク・タワー」シリーズの第1作目です。ファンタジーとは言いながらも…

予告

『ガラテイア2.2』がかなりガッツリした現代文学だったんで、次はバリバリのエンターティメントが読みたいなあ。でも、すぐに読み終わっちゃうような本をここで取り上げてもなあ。長い長い作品にしてみよっかなあ。 そんな風に、次は何を読もうかって考えて…

『舞踏会へ向かう三人の農夫』について

『ガラテイア2.2』には、リチャード・パワーズ自身のこれまでの作品に対する言及があちこちに見られます。その中で、邦訳されているのは、処女作『舞踏会へ向かう三人の農夫』のみ。そこで、参考までに、この作品を読んだ当時の感想を書いておきます。 以下…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【13】

2カ月か…。ずいぶん時間がかかりましたね。中盤くらいまでは展開も少なく、ストーリーは遅々として進みません。ひねった比喩やつながりのわからない文章、哲学的会話、科学用語、文学作品の引用などが頻出し、かと思うと突如生々しい感情表現に出くわしたり…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【12】

読み終えました。ふぅ。何でしょう、この読後感は。長い道のりでしたが、読み終えた感触は以外に軽やか。軽やかな悲しさ、透明な切なさ、みたいなものが残ります。 さて、これまで、いくつかの要素が提示されてきました。 人工知能のヘレンは意識を持ってい…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【11】

これまで2/3くらいまで読み終えましたが、もう、ストーリーをちまちま要約するのはやめてもいいでしょう。びゅんびゅん、とばしていきます。 ヘレンはどんどん成長していきます。彼女の発する言葉ひとつひとつが、驚きです。「わたしはどこから生まれたの?…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【10】

「僕」が物理学の道を捨て、文学を志すことになったのは、恩師テイラーとの出会いがきっかけでした。テイラーは、知的で洞察力にすれた文学の教授です。「僕」は彼を、「ユーモアと謙虚さを持ち合わせていなければ、大の人間嫌いになっていたかもしれない」…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【9】

またちょっと間が空いちゃったので、今回は、どんどんいきましょう。 まずは、レンツが「僕」を妻に会わせるシーンから。 冬の浜辺で寄り添い合っていたカップルに何が起きたのか? レンツの妻、オードリーは、とある療養所にいます。「僕」はレンツに連れら…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【8】

この小説では、固有名詞を記号化した書き方がされているので、慣れるまではちょっとややこしい。「僕」の元カノジョの名前は「C」としか表記されません。そして、「僕」とCが暮らした街も、「U」「B」「E」とアルファベットで表記されます。さらに、人…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【7】

さて、人工知能マシンはどうなったんでしょうか? ということで、続きです。 A号機のメモリーを減らしたB号機は、「計算言語学」とも言うべき能力を得ます。つまり、論理的な構文に強い。しかし、それを外れるともうダメです。何も答えられなくなる。「セ…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【6】

『舞踏会へ向かう三人の農夫』は、章立てが重要な構成要素となっている作品でしたが、この『ガラテイア2.2』は、章で分かれてはいません。いくつかの断章が三行空きの空白を挟んで、ずっと続いていくという形式になっています。そのせいか、ずるずるべったり…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【5】

ちょっと表記について。主人公の一人称で語られている小説なので、語り手は「僕」と表記されており、作者と同じ「パワーズ」の名前を与えられています。そこで、「DOUBLe HoUR」では、作中人物の場合、「僕」もしくは「パワーズ」とカッコ付きで表記、作者自…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【4】

この小説の構造が少しずつ見えてきました。どうやら、この小説は3つのパートで構成されているようです。思考するマシンを作るというレンツ博士との共同作業の様子、かつての恋人Cとの日々の回想、南行きの列車から始まる新しい小説をめぐる思索。これらが…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【3】

前回、積み残した「神経回路網」についてですが、どうやらレンツはこの研究によって、脳をシュミレートする人工知能を作り出そうとしているようです。自ら学習するマシン。言葉を学び、やがて喋リ出す箱。 ということで、続きにいきます。 「僕」は、例の一…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【2】

知らばっくれててもアレなので書いちゃいますが、この小説の語り手である主人公「僕」は、どうやらリチャード・パワーズらしいです。本文中で、過去の自作についてしばしば言及していますし、作者パワーズも「僕」同様にそもそもは物理学を志していたそうで…

『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ【1】

あんまり暇がないんで、ちょっと更新を休もうかなと思ってたんですが、やっかいそうな本を読み始めちゃいました。 『ガラテイア2.2』リチャード・パワーズ です。 パワーズは、デビュー作『舞踏会へ向かう三人の農夫』が素晴らしくよくって、他の作品も読ん…

『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン【6】

ここに収録されたデイヴィッドスンの作品は、どれも変な話です。でも、どこに「変さ」があるんだろうと考えると、「奇想」の部分よりも、実は「書き方」のほうにあるんじゃないかという気がしてならない。 殊能将之は解説で、「独特の文体」としてその読みづ…

『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン【5】

そうこうしているうちに、読み終えちゃいました。残ってたのは3編。どれもこれまでの作品に比べると、ちょっと長めの短編です。 「すべての根っ子に宿る力」 サント・トーマス郡の警察官カルロスが病院にやってくるところから始まります。「頭が割れそうな…

『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン【4】

忙しくて、また間が空いてしまいましたが、再開します。 今回は、4編。ざざっといきますよ。 「グーバーども」 親を亡くし、意地の悪い祖父に育てられた少年のお話。とは言うものの可哀想なお話にならないのは、柄の悪い少年のイキのいい一人称で語られてい…

『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン【3】

今回読んだ短編は、短い中にぎゅぎゅっと深い世界が詰まっていて、面白かったです。どれも僕好み。 「尾をつながれた王族」 彼はみんなのところへ水を運んできた。ひとりずつ順々に。 「この水はおいしいわ、一つ目」お母様のひとりがいった。「とてもおいし…