『ダーク・タワー I ―ガンスリンガー―』スティーヴン・キング【1】


ダーク・タワー1 ガンスリンガー (新潮文庫)
では、今回は、これです。
ダーク・タワー I ―ガンスリンガー―』スティーヴン・キング
です。
世界一有名なホラー作家、スティーヴン・キング。全7作から成る彼のライフワーク、「ダーク・タワー」シリーズの第1作目です。ファンタジーとは言いながらも、キングのことだから、少女趣味なお伽話にはならないでしょうね、きっと。僕としては悪趣味全開のキング・ワールドを期待したいところです。
長丁場になるので、まずは目次を紹介しましょう。これで、だいたいの見取り図を描きながら読んでいこうっていう魂胆。

第一章 ガンスリンガー
第二章 中間駅
第三章 山中の神殿
第四章 スロー・ミュータント
第五章 ガンスリンガーと黒衣の男

どうやらこれは、連作になっているらしく、これを読むとこのシリーズの基本的な背景がわかるそうです。章タイトルから見る限りでは、一章と五章が呼応しているような構成になっていそうですが…。


さて、本編の前に、この文庫にはシリーズが完結してから書かれた二つの短文が収められています。先にそれを読んでおきましょう。
まず、「はじめに――十九歳について(および、いくつかその他のこと)」と題された文章から。
ホビット族が大人気だった」から始まり、物語の最初の構想から完結に至るまでの舞台裏を、チラリと見せてくれるエッセイです。これは、とてもキングらしい文章。キングが読者に語りかける様子は、深みがあってちょっとばかし品がない。
ここでは、このシリーズが、『指輪物語』ミーツ『夕陽のガンマン』であることが示されます。そして、それが慢心が最もふさわしい年齢、19歳のときに構想されたことも。

わたしは熱狂して――若者だけが奮い起こすことのできる感情だ、とわたしは思う――ただの長い物語ではなく、史上最長の大衆小説を書きたいと思った。それに関しては成功しなかったが、かなりの強打をかっとばした気分である。

「かっとばした」か。いいなあ。このエッセイを読むと、いやがおうでも本編への期待は高まります。
さらに、このあと、危うくこのシリーズが未完に終わるところだったという、交通事故についても触れられます。これも、ファンとしては気になるところでしょう。
で、このエッセイが終わると次には「前書き」と題された文章があります。
こちらは、シリーズを書き終えたあとで加筆した旨についての断り書き。この、出だしの一文で、早速ガツンとやられます。

作家の書く自作に関する話のおおかたはたわごとである。

あーあー、今、「はじめに」を褒めたとこだったのに…。まあ、本編がすぐそこまで来てるので、もうこの辺にしておきましょう。
では、扉に掲げられた、「19」「再開」という謎の言葉と共に、これから長い長いお話が始まります。


と言いたいところですが、今日はここ(P35)まで。もしこれからこの本を読もうと思っている人がいたら、この隙に手に入れてください。長い旅に同伴者がいると、心強いもんですから。