2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧
「文体のリズム」って簡単に言っちゃったりするわけですが、町田康の場合のそれは、決してなめらかなリズムじゃないんですね。明治の初期を舞台にしていながら現代的な言い回しが出てきたり、客観的な記述が続いたと思ったら急に作者の独白になったり、とこ…
別に海外文学ばかり読むって決めてるわけじゃないんですよ。「読みたいけどなかなか手を出しづらい本を読む」っていう主旨に合っていれば、日本ものだって読みます。 ということで、今回は、680ページという分厚さがハードルになりそうなこれ。 『告白』町田…
さてさて、3つの短編集を読んだわけですが、まとめて読むと、ミルハウザーが好みのモチーフを、飽きもせずにくり返しくり返し描いていることがよくわかります。どの作品も、金太郎飴のように似ているんですよ。だからこうやって立て続けに読んでいると、あ…
初っぱなに登場する表題作「ナイフ投げ師」から、いつにも増して不穏な緊張感が張りつめていましたが、こうして読み終えると、ミルハウザーの暗い想像力が発揮された短編集だったなあと思います。「病的」ってのは言い過ぎですが、どこか怪しく不健全、倒錯…
いよいよ残り3編、いきます。 「パラダイス・パーク」 この短編集の中で最も長い作品。1912年、コニー・アイランドに作られた遊園地「パラダイス・パーク」が、1924年に火災で焼失するまでの変遷を、例によって報告書のようなタッチでまとめた作品。ストー…
ミルハウザー作品に特徴的な人称といえば、一人称複数の「私たち」じゃないかな。まあ、「我々」でも「僕ら」でもいいんですけど、英語にすると「We」ですね。この「私たち」は、『イン・ザ・ペニー・アーケード』にも、『バーナム博物館』にも、以前読んだ…
こうやって短編をまとめて読むとよくわかりますが、ミルハウザーはくり返し似たようなモチーフの作品を描く人のようです。例えば、「ナイフ投げ師」の驚異の技は「幻影師、アイゼンハイム」の不気味なイリュージョンを思わせます。そして、今回読んだ、「空…
ちょっと間が空いちゃいましたが、3月から続けてきたミルハウザーまつりも、ようやく第三弾。最後に読むのは、 『ナイフ投げ師』スティーヴン・ミルハウザー です。 1998年の短編集で、収録作は12編。今のところ邦訳されたものでは最新作になります。訳者は…