2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『空気の名前』アルベルト・ルイ=サンチェス【6】

捉えどころのないものはピンポイントでつまみ上げることができません。だから、周りの空気ごとふわっと捕まえ、指の隙間から覗いたらまたふわっと放さなければならない。この作品はそんな風にして書かれています。核心になかなかたどり着くことなく、螺旋の…

『空気の名前』アルベルト・ルイ=サンチェス【5】

残り約40ページ。読み終えちゃいました。「1 空気の手のなかで」のパートが80ページあって、第2部にあたるこの「2 名前」が40ページ。不思議なバランスですが、これまで螺旋を描いていた線が、中心にたどり着いたあとふわーっとばらけていく、というよう…

『空気の名前』アルベルト・ルイ=サンチェス【4】

つづきいきます。 「VIII にせものの夕焼け」の章。 月に一度、真昼に、赤紫色の薄いもやがモガドールの大気を満たした。屋上から見ると、白い壁が不思議な赤い輝きを放っているようだった。町の人々は皆、「にせものの夕焼け」と呼んでいた。十五分以上つづ…

『空気の名前』アルベルト・ルイ=サンチェス【3】

うわー、すごいすごい。これは読ませるなあという章に突入しました。これまでで一番長い章ですが、僕の好みドンピシャリです。もう、舌なめずりしながらたっぷり引用したい。なので、今回はこの章だけでいきます。 「VII 水の中の月」。 まず、この章の冒頭。…

『空気の名前』アルベルト・ルイ=サンチェス【2】

前回、表紙が地味だと書きましたが、考えてみれば『空気の名前』というタイトルも地味ですね。もやーっとしてるというか。でも読んでみると、この「もやーっ感」が作品の魅力になっている。 ではいきます。 短い章が続くので、「III 静かな嵐」「IV 燃える思…

『空気の名前』アルベルト・ルイ=サンチェス【1】

白水社から刊行されている「エクス・リブリス」は、未知の作家の海外小説を次々と訳してくれるという魅力的なシリーズ。ということで、今回は、つい先日その「エクス・リブリス」から出た小説を読みます。 『空気の名前』アルベルト・ルイ=サンチェス です…