2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『告白』町田康【9】

堪能しました。すごくよかった。質量共に町田康、会心の作と言ってもいいんじゃないかな。もっと早く読んでおけばよかった。最初にも書きましたが、町田康の小説は、デビュー作『くっすん大黒』から芥川賞をとった『きれぎれ』あたりまでせっせと追いかけて…

『告白』町田康【8】

残り200ページを、一気に読み終えてしまいました。すごかった。傑作。未だ余韻にひたっておりますが、とりあえず前回の続きから。 せっかく縫と所帯を持ったのに、熊太郎はこれまでの生活を改めるわけでもなく、家を留守にしてふらふらとあたりをほっつき歩…

『告白』町田康【7】

熊太郎は、年を経るごとにしょうもない大人になっていきます。子供の頃は、人よりちょっと自意識過剰のかわいげのないガキだったのが、だんだんろくでなしに育っていくというか。でも、それと反比例して、熊太郎の不器用さがいつしか憎めないものに思えてく…

『告白』町田康【6】

この小説の冒頭で、熊太郎は「明治二十年、三十歳を過ぎる頃には、飲酒、賭博、婦女に身を持ち崩す、完全な無頼者と成り果てていた」とありました。そのあと時間を遡り、熊太郎の少年時代・青年時代が描かれていくわけですが、ついに熊太郎も34歳。冒頭で紹…

『告白』町田康【5】

「ハッピーとバッドの間を輾転反側」した翌朝。 翌朝。早いうちに寝床から出てきた熊太郎は土間にいた平次に挨拶をした。 「おはようさんでござります」うぷぷ。土間で口を漱(すす)いでいた平次は驚いて噎せた。 「なんや、熊やないか。びっくりさせやがっ…

『告白』町田康【4】

僕は河内弁がどんなものなのかよく知らないんですが、町田康の独特の言語感覚は、読んでいて非常に面白いです。例えば、女子といちゃつくことを、「じゃらじゃらする」と表現するんですよ。いいなあ、これ。使ってみたいなあ。 では、続きです。 まっとうに…

『告白』町田康【3】

それにしても、熊太郎って男は突っ込みどころが多すぎ。そりゃあ作者でなくても、「あかんではないか」って言いたくなりますよ。今回は、城戸熊太郎、賭場で大暴れの巻です。 駒太郎の牛を弁償代は30円。そこで文無しの熊太郎は、以前葛木ドールを殺した御陵…