2007-01-01から1年間の記事一覧

『フェルディドゥルケ』ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ【2】

70年前のポーランドで書かれたこの小説ですが、30過ぎても自分が大人だという実感を持てない主人公ユーゼフは、現代の僕らにとても近しい存在のように思えます。無為な日々を過ごし、らちもないことをうだうだと考える。自らを「青二才」としながらも、反抗…

『フェルディドゥルケ』ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ【1】

あまり間を空けずに、次の本を。 『フェルディドゥルケ』ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ です。 何だか、濁点だらけで舌を噛みそうなタイトルと作家名ですね。ゴンブローヴィッチは、ポーランドの作家・劇作家。本作は1938年の作品だとか。帯に「永遠の青二…

『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク【6】

僕は、小説にワンダーを求めているところがあって、自分が思いつかないような発想で書かれていたりするとうれしくなるタチなんですよ。その意味で、この『スペシャリストの帽子』は、大満足です。「木の鼻をした父親」とか、「靴博物館に棲んでいる独裁者の…

『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク【5】

では、最後の2話いきます。 「ルイーズのゴースト」 「ねえ、ルイーズ」と片方の女が呼びかける。 「なあに、ルイーズ」ともう一人の女が答える。 二人はキスを交わす。 始まってすぐに登場するこの会話に、おやっと思います。二人の女、二人のルイーズ。彼…

『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク【4】

今回は3編、だだっといきます。 「生存者の舞踏会、あるいはドナー・パーティー」 「オークランドにね、ミルフォードサウンドに行ったことのある男がいたの」とセリーナは言った。「世界の端に立ってるみたいだったって。おかしいのよ。その前には、たしか…

『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク【3】

さっそく続きにいきましょう。今回も2編。 「雪の女王と旅して」「飛行訓練」はギリシア神話でしたが、これはタイトルからもわかるように、アンデルセンの「雪の女王」がモチーフ。さらにそれだけじゃなくて、他にもいくつものお伽話の断片があれこれと盛り…

『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク【2】

ケリー・リンクの短編集『スペシャリストの帽子』ですが、これ、ハヤカワ文庫の「FT」つまり、ファンタジーに分類されています。クリーム色の背表紙のやつ。でも、読んだ印象では、「ハリー・ポッター」的ないわゆるファンタジーとはちょっと違いますね。…

『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク【1】

ごぶさたしてますが、何ごともなかったように、新しい本を手に取ります。 『スペシャリストの帽子』ケリー・リンク です。 ケリー・リンクはアメリカの女性作家で、本作は彼女の第一短編集。SFやファンタジイの賞を獲るなど、アメリカ文学界でかなり注目を…

『ダーク・タワー IV ―魔道師と水晶球―』スティーヴン・キング【3】

すいません、ギブアップです。こーゆーエンターティメント系の小説は、一気に行かないとダメですね。ちょっと読むのを休んでいたら、エンジンがなかなかかからなくなって、そうこうしてるうちに、他の本が読みたくてしょうがなくなってきて、結局、「ダーク…

『ダーク・タワー IV ―魔道師と水晶球―』スティーヴン・キング【2】

「第一部 なぞなぞ」に行きます。 まずは、疾走する列車、ブレインの外に広がっている光景の描写から始まります。放射能汚染された土地、死に絶えた人々、捨てられたロボットたちや奇形の動物たち…、この物語の舞台背景を、カメラは淡々と捉えてゆきます。 …

『ダーク・タワー IV ―魔道師と水晶球―』スティーヴン・キング【1】

では、第4部に突入。 『ダーク・タワー IV ―魔道師と水晶球―』スティーヴン・キング です。 今回は、上中下の全3巻と、けっこうなボリューム。 まずは、目次を見ておきましょう。 プロローグ ブレイン 第一部 なぞなぞ 第一章 〈妖魔の月〉の下に(I) 第…

『ダーク・タワー III ―荒地―』スティーヴン・キング【4】

下巻は去年のうちに読み終えてたんですが、忙しくって更新が滞っているうちに、年が明けてしまいました。「読んでる途中で書いてみる」なのになあ…。 まあ、いいや。ラストまでダダっといっちゃいます。 ということで、「第二部 ラド――壊れた偶像の山」の「…