2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『噂の娘』金井美恵子【7】

現在形で綴られる息の長い文章は、まるでカメラの移動撮影のようにゆるゆると戦後のある夏の日を映し出していくわけですが、そこにカギカッコなしの誰かのお喋りやら入り組んだ回想やら本で読んだお話やらが混じり合い、境界線が曖昧なまますべては少女の脳…

『噂の娘』金井美恵子【6】

つづけます。 夜、電話があって、マダムが、二人ともおかあちゃまの電話に出なさい、と言い、お店まで歩ける? と訊くので、歩けると答え、足もとがフワフワしてなんだか変な感じだったけれど、内玄関を出て、通路に面しているお店の従業員専用の出入口から…

『噂の娘』金井美恵子【5】

1/4ほど読み終えたところでしょうか。でも、未だ、主人公の少女は熱が下らず、布団の中に横になっているようです。この作品で、会話や記憶や物語の断片がごっちゃになって出てくるのは、少女が布団の中で朦朧としながらめぐらせる意識を描いているということ…