2015-01-01から1年間の記事一覧

『メイスン&ディクスン』トマス・ピンチョン【8】

第一部を読み終えたところで震災がありなんか続きを読む気がしなくなっちゃった、というところで止まっていた『メイスン&ディクスン』ですが、映画『インヒアレント・ヴァイス』公開に合わせてピンチョンの原作『LAヴァイス』を読んだら思いのほか楽しく、…

『愛と障害』アレクサンダル・ヘモン【5】

時間をかけて少しずつ読んでいったんですが、とても味わい深い短編集でした。連作って言ってもいいのかな。どうやら同一人物に見える語り手の人生が、ほぼ時系列に沿って一人称で語られていきます。構成が見事で、順番に読んでいくとどの作品も少しずつタッ…

『愛と障害』アレクサンダル・ヘモン【4】

さあさあ、終盤の2編です。少年時代を描いた「アメリカン・コマンドー」と、作家になってからの出来事を描いた「苦しみの高貴な真実」、どちらもよかった。 では、いきましょう。 「アメリカン・コマンドー」 まずもって冒頭が素晴らしい。引用します。 小…

『愛と障害』アレクサンダル・ヘモン【3】

間が空いちゃったけど、読んでますよ。 この作品集、最初の2編はわりと普通の青春小説みたいな感じだったんですが、今回の2編はさりげない仕掛けが凝らされていて、一筋縄ではいかない作品でした。 では、いきましょう。 「シムーラの部屋」 まずは冒頭か…

『愛と障害』アレクサンダル・ヘモン【2】

ちまちまと読んでます。今回も2編。前回の「すべて」の最後に、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の始まりが告げられていましたが、いよいよ、紛争が作品に影を落とし始めます。 では、いきましょう。 「指揮者」 語り手の「僕」は20代になってます。もちろん、…

『愛と障害』アレクサンダル・ヘモン【1】

年が明けて何日も経たない頃、翻訳家・岩本正恵さんの訃報を知りました。僕は岩本さんの訳した本をそれほど多く読んでいるわけではありませんが、このブログで紹介したアレクサンダル・ヘモンの『ノーホエア・マン』はとても印象深いものでした。ヘモンは母…

『増補 夢の遠近法 初期作品選』山尾悠子【2】

増補版の続きです。「遠近法・補遺」は、山尾悠子作品の中でもべらぼうに好きな「遠近法」の続編。というか、ページ数の都合で入りきらなかったエピソードをまとめたもの。当然、面白いに決まってるわけで。 《腸詰宇宙》において、垂直の空洞を囲む回廊群は…

『増補 夢の遠近法 初期作品選』山尾悠子【1】

もう2015年ですか。去年は忙しくてあんまり書けなかったなあ。毎年思うんですが、今年はいっぱい読んでいっぱい書きたいなと。 ということで、今回は助走のつもりで、これ。 『増補 夢の遠近法 初期作品選』山尾悠子 です。 1年と少し前、憑かれたように読…