2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『童話・そよそよ族伝説 (1)うつぼ舟』別役実 【4】

いよいよ、クライマックスまできました。では、「十 捨場」「十一 かたしま」の章。 「捨場」とは、病人や他所者を泊める場として機能している地域のことを指すようです。第二章では、「領内にある領外」と説明されていました。これ、面白いですね。マージナ…

『童話・そよそよ族伝説 (1)うつぼ舟』別役実 【3】

「六 施療院島」「七 ひきのうんばあ」の章。 はっきりとした説明はありませんが、「めくらことば」とは、どうやらテレパシーみたいなもののようです。ひきのうんばあは、島の外にいるアミにめくらことばで語りかけてきます。 ひきのうんばあによれば、うつ…

『童話・そよそよ族伝説 (1)うつぼ舟』別役実 【2】

さあ、「三 おおうみ」の章です。だんだん異世界ファンタジーっぽい雰囲気になってきます。 舟はその時ようやく、虎姫岬前の葦の群生地をぬけて、大沼から、見わたすかぎりの水面をたたえるおおうみへ、ゆったりと滑り出しました。小さく寄せる波が舟端をた…

『童話・そよそよ族伝説 (1)うつぼ舟』別役実 【1】

今回は、日本の小説。 『童話・そよそよ族伝説 (1)うつぼ舟』別役実 です。別役実の書くものは、戯曲もエッセイも面白いんですが、童話作品も独特の味わいがあっていいんですよ。この「そよそよ族伝説」シリーズは、1『うつぼ舟』、2『あまんじゃく』、…

予定

『奴婢訓』に続き、前々から読んでみたかった復刊ものを、近々読みたいと思ってます。 別役実「そよそよ族伝説」シリーズ。 全3巻というボリュームですが、そーゆー本を読むブログにしたいので、これはぴったりじゃないかなと。 まあ一見長そうに思えても、…

『奴婢訓』スウィフト 【5】

こうして『奴婢訓』を読み終えましたが、スウィフトの意図は、召使いたちの悪癖を風刺することにあったそうです。いわゆる「イヤミ」ですね。クスリとも笑わずに、辛辣なことを言ってみせる。 召使は、一見真面目で礼儀正しく見えますが、腹の中には企みを隠…

『奴婢訓』スウィフト 【4】

「細則篇」の「第六章 家屋並びに土地管理人」「第七章 玄関番」。 最初に断るのを忘れてましたが、この作品、未完です。なので、この2つの章は創作メモと思しき数行の断片があるだけです。「玄関番」のほうは、ちょっと面白いんですが、たった3行なのでは…

『奴婢訓』スウィフト 【3】

「細則篇」の「第三章 従僕」。 自分は嘗て自ら従僕の一人たるの光栄を持ったものであるから、このつとめには真実深い尊敬の念を抱いている。その光栄をおろかしくも棄て去り、税関などに下らぬ職を求めるの愚を自分は演じてしまった。とまれ、従僕諸君が幸…

『奴婢訓』スウィフト 【2】

前回の最後に、「いったいどこで用を足すっていうんでしょう」と書きましたが、訳者の深町弘三氏による解説に、答えが書いてありました。深町氏によれば、この本は、「18世紀初頭英国の一種の風俗絵図」でもあるとのこと。当時のロンドンは、「不便、不衛生…

『奴婢訓』スウィフト 【1】

『ガリヴァー旅行記』の作者、ジョナサン・スウィフトの遺稿『奴婢訓』。これ、寺山修司が戯曲のタイトルに使ったりしてて、名前だけは知ってたんですが、永らく絶版だったんですよ。一度読んでみたいと思ってたんですが、それがこの度、岩波文庫で復刊され…