2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【9】

この本はすっごく面白かったです。もっと早くに読んでおけばよかった。中でも「J・フランクリン・ペインの小さな王国」は素晴らしかったです。いや、他の話も十分よかったんですが。 これら3つの作品は、アニメーション、お伽話、絵画と、どれも作りものの…

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【8】

「展覧会のカタログ」、後半です。 作品番号[14]「夜想」(一八四〇年) ここではすべてが鬱々と重苦しく、閉じ込められたような、内にこもった不吉な息苦しさに包まれている。影のような、何とも名状しがたい生き物が黒い煙のごとく夜のなかに浮かび、暗…

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【7】

では、三つ目の王国、「展覧会のカタログ――エドマンド・ムーラッシュ(一八一〇‐四六)の芸術」にいきたいと思います。 これは、タイトル通り、エドマンド・ムーラッシュというの画家の展覧会カタログ、という形式の小説。もちろん、ミルハウザーが作りだし…

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【6】

「王妃、小人、土牢」の後半です。 王に仕える数多い忠実な僕(しもべ)の一人に、スカルボという名の小人がいた。 「スカルボ」という章の冒頭。この小説には、固有名詞が全然出て来ないんですが、ついにここで固有名詞が登場です。スカルボは、狡猾で他人…

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【5】

では、二つ目の中編、「王妃、小人、土牢」にいきます。 原題は、「The Princess, the Dwarf, and the Dungeon」。ロールプレイングゲームなんかでおなじみの、ファンタジーの世界を想像させます。 この小説は、短い断章から成っています。最初の10章分の題…

アニメーションについて

僕は、アニメーションに興味があるんですが、「J・フランクリン・ペインの小さな王国」はその意味でもいろいろ興味深い点がありました。 まあ、わりと得意なジャンルということで、参考としてちょっとしたメモを付け加えておきます。 【ウィンザー・マッケ…

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【4】

「J・フランクリン・ペインの小さな王国」第V章、最終章です。フランクリンは、完成した『真夜中のおもちゃたち』をフィルムにしてもらうため、現在はアニメーション制作会社で働くマックスのもとを訪れます。そして12箱分のドローイングを、彼に預けます。…

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【3】

「J・フランクリン・ペインの小さな王国」第IV章。 雪は降りやみ、大きな吹きだまりをあちこちに残していった。ポーチの階段はすっかり吹きだまりに埋もれ、居間の窓枠にも雪が吹きつけていた。それからまた雪が降ってきて、何十億ものぎらぎら光る、しかし…

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【2】

「J・フランクリン・ペインの小さな王国」の続き。第III章です。 フランクリンは新聞社の美術部に勤め、日々新聞漫画を描いています。現在連載している漫画は二つ。 一つは、「都市の怪人」というタイトルの作品。 遠い街からやって来た、幽霊のような力を…

『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー 【1】

次の本にいきたいと思います。 前回予告したように、 『三つの小さな王国』スティーヴン・ミルハウザー です。 これ、買ったのはもうずいぶん前。ミルハウザーだからきっと好みだろうなと思っていたんですが、最初のきっかけを逃しちゃって今日まで読まずに…

つながるときに書いておく

ネットの接続状況がおかしくなっちゃって、なかなかリアルタイム更新ができません。なので、とりあえず書き留めておいたものを、ちまちま更新していきます。 リアルタイムに追いつくまで、日付はテキトーです。

『天の声・枯草熱』スタニスワフ・レム 【17】

『枯草熱』を、読んでる最中は手探りで霧の中を進むような気分だったんですが、読み終えた今、振り返ってストーリーを要約しようとすれば、それほど複雑じゃありません。事件は、とりあえず解答が与えられます。でも、それはやっぱり一つの解釈に過ぎないん…

『天の声・枯草熱』スタニスワフ・レム 【16】

「パリ(オルリー―ガルジュ―オルリー)」の章、最後までいきます。 オルリーは空港のある場所、ガルジュはバルト博士の家のある場所です。ということで、この章のタイトルから、「わたし」は空港へ戻るんだろうなということが想像できますが、まずはバルト博…

『天の声・枯草熱』スタニスワフ・レム 【15】

「パリ(オルリー―ガルジュ―オルリー)」の章のつづきです。 主人公の「わたし」は、空港のあるオルリーを出発しガルジュにあるバルト博士の家を訪れます。そこで、事件のあらましを伝えたところまでいきました。 で、ここからは20ページ以上にわたって、事…

『天の声・枯草熱』スタニスワフ・レム 【14】

「パリ(オルリー―ガルジュ―オルリー)」の章にいきます。 冒頭では今回もまず、花粉症について語られます。 わたしはオルリー空港のホテルで〈エール・フランス〉で一泊した。(中略)鼻がむずむずしはじめたので、寝る前に窓を閉めなければならなかった。…