2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『囚人のジレンマ』リチャード・パワーズ【9】

クリント・イーストウッドの最新作『チェンジリング』を観ていたら、見覚えのある地名が出てきました。ディカルブ。ホブソン家が暮らす町、有刺鉄線発祥の地です。だから何だというわけじゃないですが、「おっ」と思ったので。 では、「年号パート」からいき…

『囚人のジレンマ』リチャード・パワーズ【8】

「回想パート」は、おそらく子供たちの一人だと思われる人物が、一人称で父のことを回想しています。その時点では父親はもう亡くなっているらしく、語り手は、思い出からもう父親の人生を組み立て直そうしているようです。そのせいか、どこかセンチメンタル…

『囚人のジレンマ』リチャード・パワーズ【7】

この小説は、3つのパートに分かれているっぽいんですが、これからは、ナンバリングされた章を「ホブソン家パート」、ナンバーなしの一人称の章を「回想パート」と年号が章題になっている章を「年号パート」と呼ぶことにしましょう。 で、今回は、「年号パー…

『囚人のジレンマ』リチャード・パワーズ【6】

「6」の章。 父親が病院に行くと宣言した日の夕食。しかし、ホブソン家の食卓では誰もそのことに触れないうちに、またしても父のクイズが始まります。その名も「酔っ払いと街灯」、別名「ランダムウォーク」。 「ひとりの酔っ払いを街灯に寄りかからせてみ…

『囚人のジレンマ』リチャード・パワーズ【5】

この本の表紙には、両手を広げた男のシルエットが描かれているんですが、彼の頭にはまあるい耳が二つ付いている。この耳の形を見ると、たいていの人は「ああ、あの耳か」とピンとくると思います。 では、いきましょう。「一九四〇―四一年」の章です。 まずは…

『囚人のジレンマ』リチャード・パワーズ【4】

前にもチラッと書きましたが、この作品は、「1」「2」「3」とナンバーが振られた章と、ふられていない章があります。ナンバーが振られた章は、病気の父を抱えたホブソン家の顛末が描かれていて、ナンバーなしの章は、さらに「一九三九年」というように年…