2012-01-01から1年間の記事一覧

『青い脂』ウラジーミル・ソローキン【6】

いやあ、凄かった。弩級とか破格とか、そういうレベル。莫言やレイナルド・アレナス、ヴィトルド・ゴンブローヴィッチなんかにも通じる過剰さ。「やりすぎ文学」と呼びたいです。 物語は全体で3つのパートに分かれています。最初のパートは、2068年、遺伝子…

『青い脂』ウラジーミル・ソローキン【5】

読み終わりました。いやあ、ラストスパートはすごかった。もうどこまで行っちゃうのーって感じで、怒濤の展開。脳みそが爆発しそうになります。 ほいじゃ、いくぜ! まずは、スターリンとフルチショフのシーンから。場面がフルチショフのベッドルームに移っ…

『青い脂』ウラジーミル・ソローキン【4】

タイムマシンで1954年へ。ということで、ここでまた場面が変わります。そうすると、前回までの情報が後出しで更新される。どうやら、遺伝子研や大地交者合教団のパートは2068年の出来事だということがわかります。さらに読み進めると、この作品が歴史改変も…

『青い脂』ウラジーミル・ソローキン【3】

おっと、ここで転調。あの読みづらい書簡形式でずっといくのかと思いきや、文体が突如三人称にスイッチします。でも、終わってしまえばあの文体が妙に恋しく思えてきたりして。 あ、あと、前々回、ボリスの職業を言語学者と書きましたが、実際は「生命文学者…

『青い脂』ウラジーミル・ソローキン【2】

前回、設定まわりをざーっとさらっておいたので、今回はするするいけるかなと思ったら、とんでもなかった。さらに新たな仕掛けが登場。ボリスの手紙に、文豪クローンたちが執筆した作品が挿入されるという展開に。これがまた奇っ怪なものばかりで、今回はそ…

『青い脂』ウラジーミル・ソローキン【1】

読書モードになってるんで、どんどんいっちゃおうかな。チェコの次はロシアだろ。どうせならすごそうなヤツを読みたいな、ということでチョイスしました。今回は、最近出たばかりのほやほやの新刊。ガイブン界隈では結構話題になってる小説、 『青い脂』ウラ…

読み終えたけど

ここ3週間ネットがつながらなくなっちゃってたんですが、こういうときに限って「読んでる途中で書いてみる」をやってみたくなるような超絶面白本を読んでしまいました。なので、あとでアップしようと思って書き溜めていたものを、何日かに分けて順にアップ…

『あまりにも騒がしい孤独』ボフミル・フラバル【4】

すっかり慣れてしまった悪夢、そんな感じがする小説でした。フラバルのタッチは決してリアリズムではありませんが、これ見よがしなぶっ飛んだ奇想で押してくるようなタイプでもありません。ゴミ、下水、糞便などなど、汚物まみれの世界を描きながら、それが…

『あまりにも騒がしい孤独』ボフミル・フラバル【3】

読み終えました。おおすごい、すごい。「6」〜「8」章。地下室で鬱々としながらも気ままにやっていたハニチャの物語がここで大きく動くんですが、そこからの展開は読み応えがあります。面白いよ。 「6」の章。 ハニチャはある日、彼の地下室にある機械と…

『あまりにも騒がしい孤独』ボフミル・フラバル【2】

どうもこの作品は、語り手であるハニチャひたすら自分語りをするというスタイルで書かれているようです。ハニチャの目を通して描かれる世界は、どこかグロテスクに歪んでいる。今回読んだあたりには、そんな場面が頻出します。 では、続きです。 「3」の章。…

『あまりにも騒がしい孤独』ボフミル・フラバル【1】

ボスニアの次はチェコスロバキアにいきましょう。バルカン半島からぐぐっと内陸部へ。この国もまた複雑な政治状況を抱えてきた歴史があるんですが、そういう国の小説を読みたい気分なんですよ。 ということで、今回はこれ。 『あまりにも騒がしい孤独』ボフ…

『ノーホエア・マン』アレクサンダル・ヘモン【7】

文章を味わう、久しぶりにそんな読み方ができる小説を読んだなあという実感がありました。前もちょっとだけ触れましたが、アレクサンダル・ヘモンは、母国語ではなく習得した英語で小説を書くことを選んだ作家です。だから、一語一文に繊細にならざるをえな…

『ノーホエア・マン』アレクサンダル・ヘモン【6】

読み終えました。うーん、不思議な読後感。何故かというと…、ということで最終章。 「7 ノーホエア・マン/キエフ、1900年9月―上海、2000年8月」。 いきなり時代は1900年に遡ります。そして、エヴゲーニイ・ピック、通称キャプテン・ピックという謎めいたス…

『ノーホエア・マン』アレクサンダル・ヘモン【5】

面白いもんだからなかなか本を閉じられず、二章分読んじゃいました。なので、一気にいっちゃいます。 「5 深い眠り/シカゴ、1995年9月1日/10月15日」。 守衛は眠りこけ、椅子からすべり落ちそうになりながらホルスターの拳銃に指をかけていた。プローネク…

『ノーホエア・マン』アレクサンダル・ヘモン【4】

アレクサンダル・ヘモンは、サラエボ出身で、20代のときにジャーナリストとしてアメリカに滞在中、ボスニア戦争が勃発。帰れなくなっちゃって、それ以降、英語を習得しアメリカで作家になったという経歴の持ち主だそうです。なるほど、と思いながらも、ひと…

『ノーホエア・マン』アレクサンダル・ヘモン【3】

前章にはこう書かれていました。「私はウクライナに行っていないので、彼の人生のこの部分については、だれかほかの人間に語ってもらわなければならない」。ということで、第三章では「ほかの人間」によってヨーゼフ・プローネクのキエフでの日々が語られま…

『ノーホエア・マン』アレクサンダル・ヘモン【2】

一章の最後の方に「彼にはどんな物語があるのだろう」というフレーズが出てきましたが、第二章ではヨーゼフ・プローネクの半生が語られます。そうそう、それが知りたかったのよ。では、つづきから。 「2 イエスタデイ/サラエヴォ、1967年9月10日―1992年1月…

『ノーホエア・マン』アレクサンダル・ヘモン【1】

都甲幸治『21世紀の世界文学30冊を読む』という本で紹介されていて読んでみたいなと思った作家が何人かいたんですが、中でも気になった作家がアレクサンダル・ヘモンでした。だけど、この都甲さんの本は日本で翻訳されていない小説を取り上げるというコンセ…

再開

ごぶさたしてます。なかなか時間がなくて更新できないなあ、なんて思ってたんですが、読みはじめた本がかなりよさげなので、思いきって再開することにしました。ピンチョンは途中で止まってるし、「読み終えたので書いておく」をやりたい小説もいくつかあっ…

『短くて恐ろしいフィルの時代』ジョージ・ソーンダーズ

久しぶりの更新です。今年初。「読み終えたので書いておく」シリーズをやります。なんか、久々で書き方を忘れちゃってる感はありますが、ピンチョン再開への助走のつもり。前もそんなことを言ってた気もしますが、まあいいや。 今回はこれ。 『短くて恐ろし…