2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『昨日のように遠い日 少女少年小説選』柴田元幸 編【5】

いやあ、愛おしいアンソロジーでした。カバーの紙の手触りも心地よく、上品な装丁も非常に魅力的。収録作品はどれも素晴らしく、柴田さんの目利きっぷりがよくわかります。何度も取り出しては眺めたくなるオブジェのような短編ばかり。 これは、箱ですね。子…

『昨日のように遠い日 少女少年小説選』柴田元幸 編【4】

この本を読もうと思ったそもそものきっかけはアレクサンダル・ヘモンだったわけですが、終盤にきてついにヘモンが登場。カモン、ヘモン。 さあ、いきます。 「島」アレクサンダル・ヘモン ヴィヴァンテの「灯台」同様、これまた少年の一人称で語られる「子供…

『昨日のように遠い日 少女少年小説選』柴田元幸 編【3】

「少女少年小説」と銘打っているわけですから、少女が出てくる話もないとね。ということで、少女を主人公にした作品が二編続きます。 では、いきます。 「修道者」マリリン・マクラクフリン 主人公は、第二次性徴を迎えようとしている女の子。彼女は、自らの…

『昨日のように遠い日 少女少年小説選』柴田元幸 編【2】

柴田セレクションだからといって、英米文学だけから選ばれているわけじゃないんですね。ロシアのナンセンスな作家が登場します。そして、そのあとに続くミルハウザーもかなりトリッキー。 では、つづきを。 「トルボチュキン教授」ダニイル・ハルムス ハルム…

『昨日のように遠い日 少女少年小説選』柴田元幸 編【1】

『ノーホエア・マン』がすごくよかったのでアレクサンダル・ヘモンの他の作品も読みたいなと探してみたら、アンソロジーに一編収録されているとか。ということで、そのアンソロジーを入手。まだ、ヘモン作品にはたどり着いてませんが、これ、すごくいいんじ…

『バカカイ――ゴンブローヴィチ短篇集』ヴィトルド・ゴンブローヴィチ【4】

まず、タイトルですね。『バカカイ』って、巻末の「訳者メモ」によれば、作者が暮らしていたブエノスアイレスの街路の名前だとか。要するにあまり意味のないタイトルなわけですが、それでも僕は「馬鹿かい?」と読んでみたくなる。なんせ、どの短編を読んで…

『バカカイ――ゴンブローヴィチ短篇集』ヴィトルド・ゴンブローヴィチ【3】

読み終えました。では、後半の3編を。 「裏口階段で」 外務省に勤めながらエレガントな女性には興味を持たず、もっぱらがさつな女中や下女に魅かれる男が主人公。美人に対して「きれいなブロンドだなあ」と見とれるような調子で、女中の手を「マストドンの…

『バカカイ――ゴンブローヴィチ短篇集』ヴィトルド・ゴンブローヴィチ【2】

ゴンブローヴィチの作品を読んでいると、筒井康隆やらモンティ・パイソンなど、ブラックユーモアの名手の名前が次々と連想されます。しかも、この短編集に収録されている作品は、1928〜38年に書かれたものだとか。やるなあ、ゴンブロ。 では、続きです。 「…