2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『そんな日の雨傘に』ヴィルヘルム・ゲナツィーノ【5】

いやあ、よかった。ガツンとくるタイプの小説ではありませんが、僕の気分にぴったりハマりました。目にしたものからあれこれ思いをめぐらさせていくという点では、ニコルソン・ベイカーの『中二階』という小説と、ちょっと似ています。あれも好きだったけど…

『そんな日の雨傘に』ヴィルヘルム・ゲナツィーノ【4】

残り「8」〜「11」の章を、読み終えました。ああ、こうやって終わるのか…。これまでの展開から、格別ドラマチックなことは起きないとは思っていましたが、いい塩梅のところを突いてきますね。 では、だだっといきます。 仕事や恋愛において「足元がちゃんと…

『そんな日の雨傘に』ヴィルヘルム・ゲナツィーノ【3】

どんどんいきましょう。まずは「5」の章。 語り手「私」の収入源が、ここへきて明かされます。 七年前から、私は靴の試作品を試し履きする検査員をしている。断言できるが、この仕事は、私がこれまで止めずに続けてこられた人生で唯一のなりわいである。 も…

『そんな日の雨傘に』ヴィルヘルム・ゲナツィーノ【2】

この作品の主人公は、街をぶらつきつつ目に映るものからあれこれと思考を繰り広げていきます。というと、前回読んだ『アウステルリッツ』と似てるようにも思いますが、アウステルリッツは歴史や文明といったものを思索するのに対し、こちらは非常に瑣末なこ…