『ダーク・タワー II ―運命の三人―』スティーヴン・キング【1】

ダーク・タワー〈2〉運命の三人〈上〉 (新潮文庫) ダーク・タワー〈2〉運命の三人〈下〉 (新潮文庫)

ダーク・タワー・シリーズ第2部。
ダーク・タワー II ―運命の三人―』スティーヴン・キング
です。
今回は、ボリュームが増えて上下巻です。前回同様、まずは目次から紹介します。

プロローグ 船乗り
囚われ人
 第一章 ドア
 第二章 エディ・ディーン
 第三章 接触と着陸
 第四章 塔
 第五章 銃撃戦
シャッフル
影の女
 第一章 デッタとオデッタ
 第二章 鳴鐘
 第三章 異界のオデッタ
 第四章 異界のデッタ
リシャッフル
押し屋
 第一章 苦い薬
 第二章 蜜の壺
 第三章 ローランド、薬を手に入れる
 第四章 引き抜き
ファイナル・シャッフル

「運命の三人」というのは、たぶんここに出てくる「囚われ人」「影の女」「押し屋」のことでしょう。ついでに、三回登場する「シャッフル」も気になります。ガンスリンガーの運命の数、「三」。『ガンスリンガー』に登場した妖魔の予言によれば、「三は塔へと至る扉」、とのことですが…。
ちなみに、本編に入る前に、キングの手による「これまでのあらすじ」がついています。これは、コンパクトにまとまっていてわかりやすい。
もうひとつ、扉にはまたしても「19」の文字と、「更新」の文字があります。忘れてたけど、「19」も重要な数字のようです。


では、まず、「プロローグ 船乗り」から。
海辺で目覚めたガンスリンガーが、ロブスターの化け物に襲われるところから始まります。いきなりのピンチ。面白いのは、この化け物の鳴き声です。

「ディド・ア・チック?」
巨大なロブスターじみた生き物は悲しげに問うような声を発した。「助けてくれよ? こんなにせっぱつまっているのがわからないのか?」と言っているような口調だ。そのとき、ローランドは右手の食いちぎられた人差し指と中指がノコギリ状の口の中に消えるのを目撃した。いま一度そいつは突進してきた。ローランドは血のほとばしる右手を上げ、残っている指を食いちぎられるのを間一髪のところでまぬがれた。
「ダム・ア・チャム? ダッド・ア・チャム?」

甲殻類や昆虫って、機械っぽいところがあるじゃないですか。この妙な鳴き声に、その雰囲気がよく出ています。まるで、何かの単語のように聞こえるけど、こいつらとは言葉が通じない気がする。知性はあっても感情がない、機械音めいた鳴き声。それにしても、あっさり書いてるけど、指二本、食われちゃってます。あまりのことに、ちょっとびっくり。こういう非情さもまた機械めいてます。
ガンスリンガーは何とか巨大ロブスターを倒しますが、ローランドのピンチは去りません。右手とふくらはぎに深手を負っているし、ひどく体力を消耗している。さらに、ひょっとしたらロブスターが毒を持っているかもしれない。まったく、こんな初っぱなから、にっちもさっちもいかないような目に合うなんて!


ということで、「囚われ人」のパートに入ります。「第一章 ドア」。

ガンスリンガーはベルトの濡れていない部分から慎重に弾丸をぬき取った。痛みがあるにもかかわらず、指がまだあるような錯覚にとらわれ、何度も右手で作業をしそうになる。おかげで、そのたびに右手を膝の上に戻さなくてはならない。さながら、なかなかおすわりを覚えようとしないバカ犬をしかりつけるようなありさまだった。傷の痛みに腹を立て、あやうく右手をひっぱたきそうになったのも一度や二度ではなかった。

「バカ犬」ね。上手いこと言うなあ。右手をひっぱたくのは、やっぱり左手なんだろうな。まあ、どうでもいいことですが。でも、この先、右手が使えないってのは、かなりなハンデになるんじゃないでしょうか? せっかくの二丁拳銃なのに、引き金が引けない。まだまだ先は長いのに、ずっと指なしで行くのかな? そんなんで、闘えるんでしょうか?
さて、ガンスリンガーはこのあと、砂浜に奇妙なものを見つけます。それは…扉。「囚われ人」と書かれた扉です。ドアだけが立っている。これ、どこでもドアみたいなもんでしょう。そしてそれを開けると、そこには異世界が広がっていました。

椅子が二列になってはるか奥のほうへと連なっている通路が目に入った。いくつか空席があるが、ほとんどの椅子に男が座っている。みな奇妙な衣装を身にまとっていた。どうやら上下そろいの服らしいが、ガンスリンガーがそのような衣装を目にするのは初めてのことだった。男たちが首に巻きつけているのはジェイクの言っていたネクタイのようだが、いずれにしろやはりかれにしてみれば、そのようなものはこれまで見たことがなかった。しかもガンスリンガーの見たところ、誰一人として武器を帯びてない――銃はいうまでもなく、短刀や剣も携えていない。なんとお人好しのヒツジどもなんだ。(中略)
男たちの席の向こう側は湾曲した白壁になっていて窓が並んでいる。それらのいくつかは鎧戸のようなものでふさがれていたが、そうでない他の窓越しに青空が見えた。

これ、飛行機の機内です。もちろん、ガンスリンガーはそんなものを見たことがない。これが、異世界? いや、僕らから見ればガンスリンガーの世界が異世界です。そして、ローランドにとっての異世界は…、そうです、おそらく僕らの暮らす世界。二つの世界が扉で結ばれます。


ということで、今日はここ(P56)まで。1巻に比べると、いきなり展開が早いです。このあとは、ぐいぐい行きますよー。